柱のそばへ。岩ではなく、ガスと塵。
画面の下から伸びる柱を、先端までたどってみてください。細かな星の中に、岩の塔のような輪郭が浮かんでいます。これは「創造の柱」と呼ばれる、わし星雲の一部。NASAは地球から約6500光年の距離にある領域として紹介しています。
柱をつくるのは、ガスと塵です。遠くから見た輪郭が山や崖に似ていても、岩の地面へ着陸するような場所ではありません。星雲は宇宙に広がるガスや塵の雲で、この柱では新しい星が形成される領域を調べます。
距離と画像の幅も分けて読んでみましょう。6500光年は地球からの距離、約8光年は掲載したNIRCam原資料の横幅です。大きく表示して柱を見渡すことと、その場へ近づいて肉眼で見た景色を再現することは、異なる問いです。
星の点へ。近赤外線で読む。
冒頭の画像は、ウェッブ宇宙望遠鏡のNIRCamが近赤外線で観測したものです。柱の縁、背景の星、柱のそばにある明るい点へ、順に目を向けてください。NASAはこの画像から、新しく生まれた星の分布や、星が形成される場所を調べると説明しています。
NIRCam像は、複数のフィルターで得た画像を合成したものです。原資料ではF090Wを紫、F187Nを青、F200Wをシアン、F335Mを黄、F444Wを橙、F470Nを赤へ割り当てています。波長ごとの記録を表示色にすることで、違いを一枚で読みやすくしています。
赤外線は肉眼で見えません。この画像の金色や赤を、柱のそばにいる人がそのまま見る色とは扱わず、何を観測し、どう表示したかから読みます。また、赤外線ならすべての塵の奥が透明になるという意味でもありません。観測できる範囲は、物質と波長によって変わります。
塵の層へ。中間赤外線に切り替える。
次の画像では、背景に見える星が減り、青灰色の柱が前面へ出てきます。これはウェッブのMIRIによる中間赤外線の表示です。NASAは塵を調べるために重要な記録と説明しています。星が消えた時間変化ではなく、見る波長の窓が変わった比較です。
MIRI像ではF770Wを青、F1130Wを緑、F1500Wを赤へ割り当てています。NIRCamとは、記録する波長も色への割り当ても異なります。両方で同じ場所が赤く見えても、同じ物質や温度を示すとは限りません。ここでは柱の輪郭を手がかりに、どんな構造が読みやすくなるかを比べます。
両資料の観測日は2022年8月14日ですが、原資料の横幅はNIRCamが約8光年、MIRIが約7光年です。縦横比と画角も異なります。画像全体を同じ幅へ並べた画面で、画素をそのまま対応させたり、星の数を単純に差し引いたりする比較はしません。

同じ領域のMIRI中間赤外線像。2022年8月14日の観測。原資料の画像の横幅は約7光年。
図版の条件を見る
全画角・縦横比・原資料の表示色を保持。縮小と余白追加のみ。NIRCamとMIRIは画角とフィルターが異なる。| 方法 / 記録するもの | 読み取ること / 限界 |
|---|---|
| NIRCam / 近赤外線F090W・F187N・F200W・F335M・F444W・F470N | 星の分布とガス・塵の柱を読み、新しく形成される星を調べる。 原資料の横幅は約8光年。複数フィルターの画像へ色を割り当てる。 |
| MIRI / 中間赤外線F770W・F1130W・F1500W | 塵の構造と分布に注目する。近赤外線像では目立つ星の多くが、ここでは目立たない。 原資料の横幅は約7光年。青・緑・赤はフィルターの表示色。 |
観測日はどちらも2022年8月14日。画像の画角・比率・フィルターが異なるため、同じ画素格子や肉眼の色の比較ではありません。
図版の根拠:[nircam] NASA — Pillars of Creation / NIRCam [miri] NASA — Pillars of Creation / MIRI
雲の中へ。星が生まれる場所。
柱の中には、星が形成される場所があります。十分な質量を持つガスと塵の集まりが重力で収縮し、温まっていく過程を、NASAは新しい星の誕生につなげて説明しています。柱全体が一つの星になるのではなく、雲の中の場所ごとに変化を考えます。
若い星と周りの物質は、互いに関わります。NIRCam画像の柱の縁には波打つような赤い部分があり、NASAは形成中の星から噴き出す物質と雲との相互作用を紹介しています。岩の噴火を写した像ではなく、星が生まれる環境の記録として読む部分です。
星の位置とガスや塵の量を調べることで、星が形成される仕組みのモデルを確かめます。一枚の画像を眺めることから、波長ごとの記録を比べ、物理的な解釈へ進む。この往復が、壮大な景色を研究の手がかりへ変えていきます。
- 01記録する
フィルターを選び、星と雲から届く赤外線を観測する。
- 02比べる
星の分布、柱の形、塵の構造を波長ごとに読む。
- 03解釈する
ガスや塵の量と星の分布を、星形成のモデルへつなぐ。
視点を動かす。奥行きはどう読む?
「星雲の中に入ったら」という問いには、まず二次元の観測像と三次元のモデルを分けることが大切です。掲載画像は、望遠鏡の方向から届く光を画面に記録しています。柱の前後関係や、ある地点から周囲を見た風景まで、一枚ですべて決まるわけではありません。
NASAが公開するオリオン星雲の飛行映像は、可視光と赤外線の観測をまず二次元で比較し、その後に三次元のモデルとして見せる構成です。観測と立体表現を組み合わせると、波長によって見えやすい層や星が変わることを考えやすくなります。これは創造の柱とは別の星雲の例です。
星雲には、自ら光るガスの雲、星の光を散乱する雲、背景の光を遮る暗い雲など、異なる見え方があります。「星雲の中」は一つの景色に固定できません。ここでは創造の柱の観測を入口に、場所・波長・表示方法をそろえてから、奥行きと周囲の光を問う順序をたどりました。
見えたことと、推定したこと。
写真と測定から得たこと、説明に用いた前提を整理します。
観測・資料から分かること
- ウェッブのNIRCamとMIRIが、2022年8月14日に創造の柱の領域を観測しています。
- 各像は複数のフィルターの記録を合成し、表示色へ対応付けています。
説明に加えた処理と前提
- 星の分布とガスや塵の量は、星形成のモデルを確かめる手がかりです。
- 三次元の星雲表現では、観測像と構造のモデルを組み合わせます。
この資料だけでは決められないこと
- 画像だけで柱のあらゆる点の奥行きや、内部の任意の地点から見る肉眼の景色は決まりません。
- このページでは星や塵の量、温度、密度を新たに測定していません。
参考資料・出典
写真の条件、観測の方法、推定の範囲を原資料で確認できます。
- nircamNASA — Pillars of Creation / NIRCam ↗確認:2026-10-06
使用:星と柱、距離/画角、観測日/フィルター/表示色、権利クレジット。 - miriNASA — Pillars of Creation / MIRI ↗確認:2026-10-06
使用:塵の像、星の見え方、観測日/画角/表示色、クレジット。 - typesNASA — Decoding Nebulae ↗確認:2026-10-06
使用:星雲のガス/塵、発光/反射/暗黒の見え方。 - flightNASA — Flight Through the Orion Nebula ↗確認:2026-10-06
使用:別の星雲の二次元像と三次元モデルの役割。 - dustNASA — Dust, Structure in Pillars of Creation ↗確認:2026-10-06
使用:中間赤外線の塵と星の見え方。 - starsNASA — Star-Filled Portrait of Pillars of Creation ↗確認:2026-10-06
使用:星の形成と観測からモデルへ進む役割。